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活動の内容

未成年者の交通事故に対する親の責任

はじめに

 昨年度、当協会の交通事故相談所で未成年者が加害者となった交通事故相談事案が490 件あり、その多くは自転車によるもので、損害賠償が大きな問題になっております。
 自転車は身近にある便利な乗り物で、誰でも容易に利用できますが、賠償保険制度が確立していないため、未成年者が加害者となる交通事故の場合、親の監督責任まで及ぶ場合があります。
今回は未成年者が交通事故の加害者となった場合、親の責任について考えてみました。
 

相談の内容

 中学生(13 歳)が学習塾に向かう途中、自宅マンション敷地内から自転車に乗車して歩道に出たところ、歩道上の右方から進行して来た男性(65 歳)乗車の自転車と出会い頭に衝突し、相手方が転倒、右腕骨折等で加療4 週間の怪我をした事故でした。
 中学生の母親が来所し、賠償保険に加入しておらず、親として今後どの様に対応したらよいかとの相談でした。
 

未成年者の損害賠償責任

 小学校高学年(11〜12 歳)以下の者であれば、事理を弁識する能力のない者(責任無能力者)として、未成年者の監督義務者である親に損害賠償責任が生じます。(民法第714 条)
 逆に未成年者に責任能力が認められると、未成年者自身に賠償責任が課せられます。
 未成年者に対する責任能力の分岐点は、判例では11 歳前後から14 歳前後までと幅がありますが、だいたい12 歳あたりが分岐点の目安となっているようです。

親の民法上の責任
 未成年者の責任無能力者を監督する親には、交通事故を発生させたことについての責任ではなく、責任無能力者の監督義務を怠った責任から損害賠償義務が生じることとなります。(民法第714条)
 未成年者が責任無能力者の場合、「交通事故の発生と監督義務を怠ったこと」との間に、
@ 監督義務者が相当の監督をすれば加害行為の発生が防止されたこと
A その監督をなしえたこと
B 監督をせず放任しておけば当該加害行為が発生するとの蓋然性が一般的にも強い場合であったこと等があれば、相当因果関係が認められることになり、親の損害賠償責任は逃れられません。(昭和52.3.15 東京高裁判例)

自動車事故の場合
 未成年者が、自動車を運転して事故を起こし、賠償能力がない場合は、親として自動車損害賠償保障法による「運行供用者責任」が生じる場合があります。
 この場合は、
@ 経済的存在ないし支援関係(車両購入に際し購入資金の援助等)
A 維持管理の関係(保管場所が親と同一、又は直近等)
B 使用関係(親が私用、又は業務使用等)
があれば、親は賠償責任を問われる事になります。

親としての賠償(交渉)範囲等
 交通事故による損害賠償は、未成年者であっても成人と同様の賠償義務が生じます。
 しかし、未成年者で責任無能力者の交通事故の場合、事故によって生じた損害(治療費、休業損害、慰謝料等)の賠償義務が親権者となり、親が未成年者の賠償すべき損害を代わって賠償しなければなりません。
 示談交渉においても、賠償保険未加入の場合は、事故の相手側との直接交渉を親権者が行い、賠償保険加入の場合は、一般的に示談交渉サービスが付帯されていることから、損保会社の担当者に依頼することになります。(示談交渉サービスが付帯されていない場合は、直接交渉となります。)
 最近は、各種火災保険やレジャー保険に特約として、「個人賠償責任保険」が付帯されているものがある他、区民交通傷害保険等でも、不測の事故に備えて対人賠償を追加しておりますので検討する必要があります。
 

おわりに

 未成年者の交通事故は当事者責任の範囲を超えて親権者等まで及ぶ場合がありますので、自動車の運転に限らず、自転車の利用についても、日頃から親として未成年者に対する安全教育・指導は徹底したいものです。
 東京交通安全協会では、都内9 か所に「交通事故相談所」を開設し、無料で交通事故相談に応じています。一人で悩まず、まずはお気軽に利用してください。
 
交通安全ジャーナルから抜粋
知ってるよ いつもの道でも みぎ ひだり 免許証を 返す勇気が ふせぐ事故 歩道では 歩行者優先 忘れずに シートベルト 必ず締めよう 全座席 許しません 飲んで乗る人 飲ます人 運転は あごひもしめて 気もしめて 一台の 駐車が招く 事故・渋滞