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活動の内容

交通事故の記憶が戻らない被害者の相談(2011年1月)

はじめに

 交通事故により負傷した被害者が、事故の際に受けたショックで事故当時の記憶が全く戻らない状態で、家族が損害賠償の話し合いを進めようとしても、加害者側は、「事故は先方の信号無視が原因で、当方には責任はない。」と主張して取り合わず、被害者側が相手の不誠実に困惑して相談に訪れるケースがあります。
 本事例は、被害者側の過失が大きいと考えられる事故で、相手方との話し合いが困難な状況などから、治療費を軽減させるため「健康保険を活用する」ことと、事故の概要を正確に把握するための「刑事資料の入手要領」について説明し、加害者側との交渉に役立てていくお話しをしたいと思います。
 

事故の概要及び相談内容

 相談者の夫のAさん(59歳・無職)は、信号機のある交差点の横断歩道を横断中、左方向から進行して来たBさん運転の大型トラックに衝突され、重症を負ってしまいました。
 Aさんは交通事故のショックで、事故前後の記憶を失ってしまい、
・家族は事故の内容を知りたいが、警察は詳しい説明をしてくれない
・運転手と会社側は、「トラックは青信号で走っていた。過ちは信号無視で横断したご主人側にある。私どもは被害者だ」と、話し合いに応じてくれない
・療養が長引き治療代の支払いに困っている
と、Aさんの妻から相談がありました。
 

相談所のアドバイス

 本件のようなケースでは、被害者の当面の治療代をできるだけ安価にし、家族の医療費の負担を軽くすることと、以降の交渉等に備え被害者側が交通事故の実態を正確に知っておくことが必要です。
(1)健康保険診療の活用について
 交通事故で負傷した場合の治療にも各種健康保険、船員保険、労災保険等が利用できます。社会保険を使用して治療すると自由診療に比べ治療費が少なくてすむメリットがあります。従って、被害者にも著しい過失がある場合や加害者の支払い能力が低い場合などは、社会保険を利用すれば治療費が少なくてすみ、他の慰謝料などの損害費目に廻せることになりますし、特に、支払限度額のある自賠責保険を有効に活用することができます。診療の途中からでも健康保険の利用を医療機関に申し出て、当面の経済的負担の軽減を図るようにしてください。
 なお、交通事故の治療に健康保険等を利用するための手続きは、保険管掌者である「健康保険組合・区市町村・社会保険事務所等」に申し出が必要で「第三者行為による傷病届」をすみやかに提出することが必要です。
(2)交通事故に関する刑事資料等の入手と事故現場の確認について
◇刑事資料の入手方法
交通事故の過失割合が問題となる場合で、最も参考となるのが実況見分調書などの刑事資料です。実況見分調書などの刑事資料を検討することで、事故の概要が明らかになる例は多数あります。刑事資料などの記録は検察庁において、不起訴の場合は実況見分調書の閲覧・謄写を、起訴されていれば一部を除き加害者の供述調書を含めた刑事記録を閲覧・謄写することができ、一定の要件のもとで開示する運用がなされています。これらの記録を取り寄せる場合の手順は次のとおりです。
@ 交通事故発生場所を管轄する警察署で事件送致月日、送致番号(検番という)を確認する
A 検察庁交通部交通事件連絡室(以下地検という)に「事故日・当事者名・前記@の内容」を電話連絡し、処分結果を調べる
B 処分結果は、依頼すれば郵送による文書回答が可能です
C 地検に、事件記録の閲覧希望を申請
地検において閲覧の準備ができると「閲覧可能」との連絡があります
D 閲覧、謄写
地検において閲覧又は謄写する

◇その他必要な書類
 交通事故の現場確認とその記録は、後々重要な資料となります。
@ 事故現場の交差点の道路状況、交差点の信号サイクル秒数の測定などを確認し、見通し状況等を写真撮影する
A 被疑者の供述している内容に基づき、事故現場の再確認をして、矛盾点の発見に努める
 

損害賠償交渉等

 交通事故相談所では、入手した資料に基づき、事故の正確な概要を考察しながら損害賠償額の算定を行い、自動車損害賠償責任保険への被害者請求や任意の損害賠償請求に関し最も適した解決方法を検討し、相談者にアドバイスします。
 交通事故による損害賠償等の交渉は、通常、相手の代理人である保険会社(共済組合)と被害者との間で行われるのが一般的ですが、折り合いがつかない場合などは、日本弁護士連合会交通事故センターや交通事故紛争処理センターなどの法律相談(無償)を利用し、和解、斡旋する方法もあります。
 

おわりに

 交通事故は、一瞬の不注意や勘違いから起こるものです。一生に一度遭遇するかどうか分からない交通事故に遭った場合、頭は真っ白になり、何から手をつけてよいのか途方に暮れると思います。特に今回の相談のように、被害者の記憶が喪失しているような場合の家族の苦悩はなおさらです。
 交通事故相談所では、このような事案の対処方法や損害賠償交渉等における疑問点など、交通事故に関するさまざまな問題に相談者の身になって応じています。どうか一人で悩まず、交通事故相談所を活用して交渉の道標を見つけて下さい。
 なお、交通事故は必ず警察への届け出が義務付けられています。警察へ届出のないものは、刑事資料の入手ができないことを申し添えます。
 
 交通安全ジャーナル2011年1月号から抜粋
知ってるよ いつもの道でも みぎ ひだり 免許証を 返す勇気が ふせぐ事故 歩道では 歩行者優先 忘れずに シートベルト 必ず締めよう 全座席 許しません 飲んで乗る人 飲ます人 運転は あごひもしめて 気もしめて 一台の 駐車が招く 事故・渋滞