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活動の内容

加害車両が任意保険に加入していない場合の対応策は…?

はじめに

 交通事故相談で、「家族が大怪我で入院しているが、相手の車は自賠責保険しか入っていない」、「横断歩道を横断中、車に跳ねられ怪我を負ったが相手は何も対応してくれない」などと悲痛な表情で相談に来られる方がいます。交通事故で早急に対応しなければならないのが、怪我を負い入院・通院等した場合の治療費をどうするかといった事ではないかと思います。
 そこで、加害者側が任意保険に加入していない場合、どのような対応が可能か考えてみました。

自賠責保険で対応する場合

 自賠責保険は強制保険といわれ、車検の際必ず加入しなければならないが、対人賠償保険で物損賠償は対象となりません。
 また、自賠責保険は被害者救済の趣旨から、被害者に重過失がない限り減額されませんが、傷害の場合の限度額は、治療費のほかに休業損害、慰謝料等を合わせて120万円であり、治療費が高額になると慰謝料等の支払いは制限されます。
 ○自賠責保険適用のメリット
  ・被害者に重過失(7割以上)がなければ、限度額が減額されない。
  ・加害者が加入している損害保険会社に、被害者が直接損害賠償を請求できる。
  ・損害額が確定する前でも仮渡金の支払を受けることができる。
  ・慰謝料が支払い対象となる。

健康保険で対応する場合

 交通事故の治療には、健康保険は使えないと思っている人が多いようです。医療機関(以下「病院等」という)においても、「交通事故には健康保険は使えず、いわゆる自由診療」との認識が一部あるようですが、健康保険で交通事故の治療を受けることができます。昭和43年10月12日付厚生省通達で「交通事故も健康保険が使用できる」ことが確認されています。また、昭和60年6月28日大阪地裁で「保険を使えるのにそれを拒否することはできない」との判決もあります。
 健康保険の場合は、1点10円と単価が決まっていますが、自由診療の場合は、単価が自由で病院によって異なり、健康保険より高額となります。
 健康保険で治療をする場合は、「第三者行為による傷病届」を主管機関(区・市役所の健康保険課)に提出する必要があります。
 ○健康保険適用のメリット
  ・治療費が低額に抑えられる。
  ・被害者の過失が大きい場合でも損害額が抑えられる。
  ・自賠責保険は傷害の場合120万円が限度額であることから、健康保険の利用により治療費を抑えることによって、自賠責保険を治療費以外の補償(休業損害、慰謝料等)に充てられる。

労災保険で対応する場合

 被害者が雇主の業務に従事中、または通勤途中に交通事故の被害に遭った場合には、労災保険が適用になります。この場合、健康保険は適用されず、労災保険には健康保険にあるような治療費の自己負担部分がありません。
 被災者(被害者)が第三者(加害者)行為の災害について、労災保険の給付を受ける場合には、被災者の所属する事業所を管轄する労働基準監督署に「第三者行為による災害届」を提出することが必要です。提出しないと、労災保険の給付が一時差し止められる場合があるので注意しなければなりません。
 ○労災保険適用のメリット
  ・治療費の全額が労災保険の適用となり、被害者の一部負担はありません。
  ・被害者の過失割合による減額はなく、長期治療も適用される。
  後遺障害の等級認定は、自賠責保険の書類審査と異なり顧問医が診断して認定する。

交通事故相談員が相談者にお尋ねすること

 ○事故の態様(何と何の事故で、誰が怪我したか等)
 ○警察署に届けている事故か、未届けの事故か
 ○自動車損害賠償保険(自賠責保険)・任意保険の加入の有無
 ○被害者側の怪我の程度と事故に至った経過
 ○事故当時の行動目的(業務中・通勤途中等)

おわりに

 交通事故により怪我をした場合、早期対応が大切ですが、加害者側の対応が遅く、治療費の自己負担が大きい場合は、被害者自身が自己車両の任意保険契約時に加入している「人身傷害保険」を利用して、第一次的に対応する方法もあります。
 東京交通安全協会では、都内8か所に「交通事故相談所」を開設し、このほか交通事故に伴って生ずる様々な問題点について、無料で相談に応じています。

 
交通安全ジャーナルから抜粋
知ってるよ いつもの道でも みぎ ひだり 免許証を 返す勇気が ふせぐ事故 歩道では 歩行者優先 忘れずに シートベルト 必ず締めよう 全座席 許しません 飲んで乗る人 飲ます人 運転は あごひもしめて 気もしめて 一台の 駐車が招く 事故・渋滞